マリアナ沖海戦④

ma17072010
7時25分、第3航空戦隊の空母「千歳」「千代田」「瑞鳳」から、第1次攻撃隊64機が、「7イ」【赤○】目標へ発進しました。
7時45分、第1航空戦隊の空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」から、第1次攻撃隊128機が、「7イ」【赤○】目標へ発進しました。
9時00分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第1次攻撃隊49機が、「3リ」【緑○】目標へ発進しました。
10時15分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第2次攻撃隊50機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。
10時20分、第1航空戦隊の空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」から、第2次攻撃隊18機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。
10時30分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第2次攻撃隊15機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。

ma17072713
実は、発見した3群の敵のうち、「15リ」【黄色○】と「3リ」【緑○】は、最初に見つけた「7イ」【赤○】との重複であり、航法員の”不慣れ”と”錯誤”から、位置を間違えて報告したのでした。

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角田覚治中将率いる第1航空艦隊(陸上基地部隊)の索敵機や、栗田健男中将率いる前衛艦隊の索敵機から、機動部隊索敵機のミスを知らせてきましたが、陸上基地部隊の掩護や索敵に不満を抱いており、信頼していなかった小澤治三郎中将は、取り合いませんでした。
その為、「15 リ」【黄色○】と「3 リ」【緑○】という幻の敵に向かっていった攻撃隊は、混乱を来す事となります。

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かてて加えて、当日の天候が雲量8と視界が悪く、高度3,000mまで下層雲が広がっていました。
練度未熟な搭乗員達は、空母を発艦したあと、指揮官機や僚機を見失う気が多く、洋上航法をマスターしていない彼らは、自信無く、バラバラに飛ぶ他無かったのです。

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アメリカ機動部隊は、6月18日に、真珠湾の方位測定所から、日本機動部隊の正確な位置情報を受け取っており、6月19日に日本機が攻撃してくると予想し、艦隊の西方50マイルに警戒駆逐艦を進出させ、レーダー監視に当たらせていました。

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10時00分、警戒駆逐艦(戦艦「アラバマ」の説あり。)のレーダーが、自艦から100マイルの距離に、近接する日本機を捕捉し、アメリカ機動部隊は直ちに、470機に及ぶグラマンF6F「ヘルキャット」戦闘機を発艦させ、日本機の進路上に誘導、アメリカ機動部隊から50マイル西方の高々度に、待機させました。

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最初に飛来したのは、「7イ」【赤○】に向かった、中本道次郎大尉率いる第3航空戦隊・第1次攻撃隊の64機で、待ち受けていた「ヘルキャット」に半数以上が撃墜され、これを突破した一群も、目標が近くを通過しただけで爆発する、「VT信管」付き砲弾の弾幕に晒されました。

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僅か2機が弾幕を潜り抜け、重巡洋艦「ミネアポリス」に至近弾を、戦艦「サウスダコタ」に命中弾を与えて小破させましたが、64機中、総計41機が撃墜されました。

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続いて飛来したのは、「7イ」【赤○】に向かった、垂井明少佐率いる第1航空戦隊・第1次攻撃隊の115~116機(発艦した128機中、1機が自爆、8機がエンジン故障で帰還、2機が味方誤射で墜落、1~2機が味方誤射で不時着水。)で、待ち受けていた「ヘルキャット」に94機が撃墜され、これを突破した一群も、目標が近くを通過しただけで爆発する、「VT信管」付き砲弾の弾幕に晒されました。

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僅か3機が弾幕を潜り抜け攻撃し、2機が空母「ワスプ」「バンカーヒル」に至近弾を与え、1機が戦艦「インディアナ」に体当たりしました。

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幻の目標「3リ」【緑○】に向かった、石見丈三少佐率いる第2航空戦隊・第1次攻撃隊の49機は、目標を確認出来ず、待ち受けていた「ヘルキャット」に14機が撃墜されました。

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幻の目標「15リ」に向かった、第1航空戦隊・第2次攻撃隊と第2航空戦隊・第2次攻撃隊の65機も、目標を確認出来ませんでした。

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幻の目標「15リ」【黄○】に向かった第1航空戦隊・千馬良人大尉率いる18機は、隊形がバラバラとなり、待ち受けていた「ヘルキャット」に9機を撃墜され、1機使用不能となりました。
第2航空戦隊・宮内安則大尉率いる32機は、グアム島の基地へ着陸しようとしましたが、待ち受けていた「ヘルキャット」に30機が撃墜され、着陸した2機も、爆撃で出来た孔に突っ込んで大破しました。
第2航空戦隊・阿部善次大尉率いる15機が、偶然にもアメリカ空母を発見し、空母「ワスプ」「バンカーヒル」を攻撃しましたが、命中弾を与えられず、10機行方不明、2機が不時着しました。

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結局、6月19日に、空母を発艦した日本機371機のうち、215機が未帰還となり、6月19日戦闘終了時の残存機数は、戦闘機44機・戦闘爆撃機17機・爆撃機11・攻撃機30機の合計102機で、開戦前の439機から、337機も減じていました。

ma17072710
6月20日の戦場離脱時には、残存機数は、第1航空戦隊7機、第2航空戦隊33機、第3航空戦隊21機、の総計僅か61機となり、日本海軍航空兵力が消滅した事を、印象付けたのです。
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マリアナ沖海戦③

ma17071901
6月18日午後、索敵機が、サイパンの西方300浬・味方起動部隊の北東方向380浬の地点に、アメリカ機動部隊を発見しますが、司令長官・小澤治三郎中将は、『距離が遠すぎて、攻撃隊の到達時に日が暮れ、薄暮攻撃となる。今の搭乗員の練度を鑑みれば、戦果が期待出来ない。増してや、攻撃隊の帰還が夜間となる。訓練していない、夜間の空母への着艦は、不可能だ。』と判断、『彼我の距離・300浬まで接近して、6月19日早朝に、攻撃隊を発艦させる。』事を決断しました。

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冷静・正しい判断でしたが、アメリカ軍は夕刻になると、上空直衛戦闘機を帰還させていた為、上空は、がら空きの状態でした。
レーダー探知される為、結局は待ち伏せ攻撃に遭うでしょうが、アメリカ軍・空直衛戦闘機の再発進に時間が掛かれば、日本軍攻撃隊が、アメリカ機動部隊上空に辿り着ける可能性が、高まっていたかも知れません。

ma17071902
6月19日、ミッドウエイ海戦の教訓から、索敵は入念に行うべき事を学び、43機を用いた、3段索敵を実施します。
6時34分(図では0600表示)、⑦番線機が、アメリカ機動部隊を発見、目標「7イ」としました。
8時45分(図では0845表示)、③番線機が、アメリカ機動部隊を発見、目標「3リ」としました。
9時00分(図では0720表示)、⑮番線機が、アメリカ機動部隊を発見、目標「15リ」としました。

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ma17072010
7時25分、第3航空戦隊の空母「千歳」「千代田」「瑞鳳」から、第1次攻撃隊64機が、「7イ」【赤○】目標へ発進しました。
7時45分、第1航空戦隊の空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」から、第1次攻撃隊128機が、「7イ」【赤○】目標へ発進しました。
9時00分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第1次攻撃隊49機が、「3リ」【緑○】目標へ発進しました。
10時15分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第2次攻撃隊50機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。
10時20分、第1航空戦隊の空母「大鳳」「翔鶴」「瑞鶴」から、第2次攻撃隊18機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。
10時30分、第2航空戦隊の空母「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」から、第2次攻撃隊15機が、「15リ」【黄○】目標へ発進しました。

ma17071805
司令長官・小澤治三郎中将は、攻撃隊発進後、敵との間合いを、アウト・レンジ戦法最良の400浬とすべく、120度変針することを決定します。
7時45分~8時2分に、第1次攻撃隊を発進させた空母「大鳳」は、左回りに約290度変針しました。
8時9分、日本艦隊の位置通報により、現場海域を警戒していたアメリカ軍潜水艦「アルバコア」は、 空母「大鳳」の変針で、絶好の魚雷発射位置に恵まれ、6本の魚雷を発射します。

ma17072001
8時10分、空母「大鳳」を発進したばかりの、小松幸男(咲男とする資料あり。)兵曹長・國次萬吉上飛曹ペアの「彗星」艦上爆撃機が、雷跡2本を発見、急降下・体当たり自爆して、1本を破壊しますが、8時11分、残り1本が、空母「大鳳」右舷前部に命中しました。

ma17072002
この影響で、軽質油(ガソリン)タンクに亀裂が生じ、噴出したガソリンが気化ガスとなり、管内に充満し始めます。
かてて加えて、戦闘機を載せた状態だった、前部エレベーターのワイヤーが、衝撃で滑車から外れ、エレベーターが傾斜したまま途中で止まってしまいました。

ma17072007
攻撃隊が帰還し、着艦することを鑑み、司令長官・小澤治三郎中将の命令で、前部エレベーターの開口部を、応急的に材木・食卓・腰掛等で塞ぐ処置が施され、9時20分頃、完了したのですが、却って、気化ガスを艦内に閉じ込める事になりました。

ma17072005
『全艦、通風・換気せよ。』が下令されましたが、「クロ-ズド・バウ(密閉型艦首)」の採用等、防御第一目的で建造した空母「大鳳」には、外気の入れる場所が少なかったので、已む無く、舷窓を打ち破って通風孔を作りました。

ma17072008
火気厳禁・全排気装置作動が厳命され、後部エレベーターは、通気の為、降ろされた状態でしたが、正午頃から攻撃隊が帰還し始め、その都度、後部エレベーターを上げ下げする必要が生じた為、逃げ場を失った気化ガスは、益々濃度を高め、軽質油(ガソリン)タンク亀裂修理に当たった運用科員は、防毒マスクを着けていても、ガス中毒でバタバタと倒れていく状況でした。

ma17072003
14時32分、空母「大鳳」は、大爆発を起こしました。
前部エレベーター左側の飛行甲板は、ラグビー・ボール形に、高さ2mほど膨れ上がり、甲板の亀裂から火柱が噴出しました。
格納庫にあった飛行機の燃料・魚雷・爆弾が、次々と誘爆し、他艦からは、爆発の度に、航空機の破片に混じって、四肢を大の字に突っ張って虚空に舞う人影が、夥しく望見出来たといいます。

ma17072006
16時28分、空母「大鳳」は沈没しました。
火元は右舷中央部とみられ、ボイラー(罐)室の火気が火元であるとか、換気装置電気系統がショートしたのが原因、と語られていますが、真相は、今もって不明です。

ma17072004
11時20分、日本艦隊の位置通報により、現場海域を警戒していたアメリカ軍潜水艦「カバラ」は、 空母「翔鶴」に対し、絶好の魚雷発射位置に恵まれ、6本の魚雷を発射します。

ma17072009
このうち3本が命中し、航空燃料タンクに引火して、全艦火の海となった空母「翔鶴」は、14時10分、沈没しました。
空母「大鳳」・空母「翔鶴」という2隻の大型空母が、約100機の飛行機を搭載したまま沈没した事は、致命的な損害でした。

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tag : マリアナ沖海戦 大鳳 翔鶴 小澤治三郎

マリアナ沖海戦②

ma17071702
アメリカ側との圧倒的物量差と、日本側航空機搭乗員の練度不足を鑑み、司令長官・小澤治三郎中将が採った戦術が、「アウト・レンジ戦法」でした。

司令長官・小澤治三郎中将は、指揮官を集めて三つの訓示を与えます。
①損害を顧みず。
②大局上必要な場合、一部を犠牲に供す。
③通信連絡が思わしからぬ場合は、指揮官の独断専行を要す。

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日本海軍・「零式艦上戦闘機」は、560浬までの索敵が可能で、

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新鋭艦上爆撃機「彗星」、

ma17071705
艦上攻撃機「天山」は、
共に300浬先の敵艦攻撃能力があるのに対し、アメリカ側の索敵距離は、350浬が限界、攻撃能力は、200浬以上は無理、とされていました。
『先に敵を発見し、相手の攻撃機が到達出来ない地点から、攻撃を仕掛ける。』のが骨子です。

ma17071709
「あ」号作戦の主役を演じる、日本海軍・第一機動部隊は、その中の第一航空戦隊に所属する、空母「翔鶴」「瑞鶴」が、2月6日に本土を出撃しました。
本来であれば、沖合で、地上基地から飛び立った飛行機を、順次着艦させて収容するのですが、搭乗員の錬成不足から、新鋭機での空母への着艦訓練が実施出来ておらず、已む無く、港で荷物の如く積み込んだのでした。
3月20日、スマトラ島のリンガ泊地に到着した、空母「翔鶴」「瑞鶴」は、猛訓練を始めますが、艦載機は一旦、空母を発艦してシンガポールの地上基地に着陸し、其処に常駐して主だった訓練を行ったのです。
空母への着艦訓練は、態々リンガ泊地沖合を航行中の空母に対して、初めて実施されるという、体たらくで、着艦失敗や空中接触等、事故は10件以上発生しました。

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スマトラ島のリンガ泊地は、石油の産地・パレンバンに近い為、燃料の心配が無く、水深が浅いので、敵潜水艦に狙われる危険性も無いという、最高の環境の投錨地でした。
但し、航空母艦搭載の艦載機は、発艦・着艦の際には、航空母艦が風上に向かって航行して、風の抵抗を最大にして揚力を得る必要がある為、航空母艦は行動範囲が広くなる傾向がありました。

ma17071711
3月7日に、呉の海軍工廠で竣工したばかりの新造空母「大鳳」は、艦載機を収容して、3月28日、経由地シンガポールを目指し、山口県平郡島沖から出航ました。

ma17071804
4月9日にシンガポールからリンガ泊地に到着した空母「大鳳」は、4月15日に第三艦隊旗艦となり、司令長官・小澤治三郎中将座乗の下、5月12日までの一か月間、発着艦訓練を行いましたが、これが事実上、最後の訓練になるとは、誰も想像だに、していませんでした。

ma17071710
昭和19年5月11日、第一機動部隊は、油の積出港である、バリクパパンやタラカンに近い、タウイタウイ泊地に向かうことになり、5月16日に集結完了しました。

ma17071811
然しながら、予め機密文書解読で、日本海軍の動向を察していたアメリカ海軍は、クリスチー少将指揮下の南西太平洋潜水艦部隊に所属する、「プファー」「ラッシャー」「ハーダー」の3隻を、タウイタウイ泊地周囲に配置させており、その跳梁跋扈に因り、6月に入ると、潜水艦を掃討する筈の日本海軍・駆逐艦までが、「雷(いかずち)」「水無月(みなづき)」「早波(はやなみ)」「谷風(たにかぜ)」と、相次いで4隻撃沈される事態となり、タウイタウイ泊地の外へ出ての訓練が、6月13日の出港迄、全く出来ず、蟄居(ちっきょ)同然となりました。

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この事は即ち、1ヶ月間、航空母艦への発着艦訓練が出来ず、搭乗員の技量が大きく下がり、戦闘能力が低下したことを意味します。
搭乗員は読書や釣りに興じる等、無聊(ぶりょう)をかこつ以外に、為す術がありませんでした。

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事実、出動訓練と挙艦応急訓練を1回実施したのみの、空母「大鳳」に於いては、タウイタウイ泊地出港直後に対潜哨戒機が着艦に失敗し、甲板上の飛行機5機が炎上・1機が大破・1機が小破・搭乗員1名と整備員7名が死亡する事故が起きています。

ma17071707
6月14日、最終集結地であるフィリピン中部のギマラス泊地で、夜を徹して、慌ただしく燃料補給が行われました。
6月15日、第一機動部隊は、ギマラス泊地から出撃します。
6月16日、アメリカ軍の搖動作戦に呼応して、西北ニューギニアのビアク島へ派遣していた第一戦隊と合流、夜通しの洋上補給を行いました。逼迫している燃料事情が、垣間見れます。

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アメリカ第58機動部隊指揮官:マーク・ミッチャー中将は、小澤治三郎中将の戦術を、おぼろげながら予測しており、司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将に対し、日本艦隊に向かって進撃する事を進言しますが、却下されます。

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司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将は、『”サイパン・テニアン・グアム等の、攻略作戦を支援する”という主任務を、優先するべきで、サイパン・テニアン・グアム近海から離れるべきではない。』との見解でした。

ma17071809
司令長官:レイモンド・スプルーアンス大将の見解には、3つの根拠がありました。
①150浬前方を探知出来る、レーダーが完備されている。

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②目標物の近くに行けば、自動的に爆発する、「VT近接感応信管」を持った砲弾を装備している。

ma17071812
③「日本海軍・零式艦上戦闘機」の性能を上回る、「グラマンF6F・ヘルキャット戦闘機」の、配備・練成が進んでいる。

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ミッドウエイ海戦時とは異なり、日本側が先に敵を発見し、先制攻撃を仕掛けますが、ミッドウエイ海戦時と比して、彼我の物量差が圧倒的で、搭乗員の練度差も大きく、加えて、《レーダー・VT信管・ヘルキャット》という、完璧な防御システムを構築していたアメリカ側に、挑もうとしていたのです。

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tag : マリアナ沖海戦 小澤治三郎 大鳳 マーク・ミッチャー レイモンド・スプルーアンス

マリアナ沖海戦①

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昭和17年10月に戦われた「南太平洋海戦」で、日本軍は、アメリカ側の、新兵器40㎜対空機関砲・レーダーを活用した対空射撃法に因り、開戦以来の練達の航空母艦搭載機搭乗員を、殆ど失ってしまいました。

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連合艦隊司令長官・山本五十六(いそろく)大将は、攻勢を強めるアメリカ軍に対抗して、航空兵力を中心とする、「い」号作戦を、昭和18年4月から実施します。

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この作戦には、航空母艦搭載の飛行隊を、陸上基地に転用して使用する事が含まれていましたが、機動部隊指揮官小澤治三郎中将は、漸く航空母艦からの発着艦が、出来るようになったばかりの、錬成途上にある航空母艦搭載飛行隊を、みすみす陸上基地へ移してしまう事に反対しましたが、山本五十六大将に押し切られてしまいました。

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「い」号作戦は奏功する事なく終了し、山本五十六大将が戦死、後継の連合艦隊司令長官・古賀峯一大将は、昭和18年11月に、「ろ」号作戦を実施します。

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この作戦にも、航空母艦搭載の飛行隊を、陸上基地に転用して使用する事が含まれており、機動部隊指揮官小澤治三郎中将は、断腸の思いで応じました。

ma17071408
アメリカ軍はこの戦闘で、グラマンF6F艦上戦闘機・レーダー搭載で、目標物の至近距離で爆発する、”VT信管”内臓の砲弾、等の新兵器を繰り出した為、「ろ」号作戦の終了時、日本機動部隊の残存保有機数は53機となり、120機・損耗率70%という被害を被ったのでした。

ma17071501
機動部隊指揮官小澤治三郎中将が、三度、航空母艦搭載航空部隊の再建に乗り出している矢先に企図されたのが、「あ」号作戦(”あ”は、アメリカを指す。)でした。

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この間、小澤治三郎中将は、地上の基地航空隊としての「第1航空艦隊」(司令官・角田覚治中将)再編に力を注ぎ、定数を1,644機としますが、満たされる事は無く、2月21日、テニアンに着任した司令官・角田覚治中将は、翌日、夜間攻撃を強行、94機もの損失を出し、消耗させます。

ma17071508
昭和19年2月、連合艦隊司令長官・古賀峯一大将は、陣頭指揮を執るべく、パラオに進出しますが、大空襲に遭い、3月31日にダバオへの脱出を企図し、途中で遭難、殉職しました。
かてて加えて、同時に遭難して捕虜となった参謀長・福留繁中将が運んでいた、「次期決戦の指導要項が記された機密資料」が、アメリカ側の手に渡ってしまいます。
アメリカ軍は、日本軍の手の内を知りました。

ma17071401
昭和19年5月3日、連合艦隊司令長官に、豊田副武(そえむ)大将が就任します。
当時、日本海軍・軍令部は米軍の進行目標を、以下の2ルートと推定していましたが、どちらが実施されるのか、掴みかねていました。
①西カロリン諸島のパラオから、フィリピンに進み、台湾・沖縄・九州と進攻するルート。
②アリアナ諸島から、小笠原諸島に進み、直接関東に上陸するルート。

ma17071409
結局、連合艦隊司令長官・豊田副武大将が発令した「あ」号作戦要領は、以下の2海面に定められました。
第一決戦海面・パラオ付近海面。
第二決戦海面・西カロリン付近海面。
若しアメリカ軍が、想定作戦海面以外に来攻した場合は、基地航空部隊が、これを攻撃するとしていましたが、この作戦要領は、決戦海面を、日本軍機動部隊の待機地点近くに持って来ようとする、日本海軍・軍令部の期待・希望に基づくものでした。

ma17071507
当時、日本海軍連合艦隊は、慢性的な、燃料・それを運ぶタンカーの不足に陥っており、機動部隊の行動範囲は、1,000浬に制限されていました。
シンガポール南方のリンガ泊地に居た日本軍機動部隊が、マリアナ海域まで進出するのに必要な燃料は8万tですが、アメリカ軍潜水艦に撃沈されたタンカーが、11隻に及んでいた為、現有タンカーでは、5万tしか運べず、機動部隊はマリアナ海域で、3日間しか行動出来なかったのです。

ma17071407
期待の基地航空部隊である、「第1航空艦隊」(司令官・角田覚治中将)ですが、基地の移動が頻繁で、整備員が取り残されたり、弾薬・部品が別の島に送付されたりで、可動機は定数の20%でした。

ma17071402
結局、「第1航空艦隊」は、地上でアメリカ軍の急襲を受けて破壊されたり、アメリカ軍の堅い防御網により撃墜されたりして、7月4日に壊滅し、司令官・角田覚治中将は、最後の拠点・テニアン島で、7月31日に自決しました。

ma17071406
機密文書入手により、日本海軍の内情を熟知していたアメリカ軍は、2方面作戦を同時進行する事にし、先ず5月27日、ダグラス・マッカーサー大将に率いられたアメリカ陸軍が、ビアク島に上陸し、日本海軍に揺さぶりをかけてきました。

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日本海軍司令部では、ビアク島付近に艦隊を動かせば、アメリカ機動部隊を誘致出来るのではないかという意見が出て、まんまとアメリカ側の罠に嵌まり、ビアク島救援の「渾(こん)」作戦が実施されます。

ma17071403
二次に渡って実施された「渾(こん)」作戦でしたが、増援部隊輸送計画は失敗に終わり、第三次攻撃を準備中の6月11日、見透かしたアメリカ軍は、マリアナ諸島を空襲し、6月13日には、サイパン島を艦砲射撃します。

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日本機動部隊が、タウイタウイ泊地からギラマス泊地へ移動し、燃料補給が完了した6月15日、アメリカ軍がサイパン島へ上陸を開始し、それを受けて連合艦隊司令長官・豊田副武大将は、「あ」号作戦・発動命令を下したのでした。

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ミッドウエイ海戦 余録

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巷間、日本海軍重巡洋艦「利根」から発艦した索敵機の”利根4号機”は、『カタパルト(発射装置)の故障で発艦が30分遅れ、決められた索敵範囲を縮小して折り返し、日本艦隊に混乱を来す、最悪の時間帯に連絡をし、且つ、敵艦隊の位置を、実際より北側に報告した。』と認識されています。
偵察員が、発艦時間の遅れを考慮し、自機の到達予定位置(作図)修正をしなかった疑いがありますし、且つ、日本海軍1航戦司令部も、誤りに気が付きませんでした。

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日本機動部隊の画策した索敵線は、間隔の開いた手薄な7本で、積極的な索敵意図は感じられません。
然も、空母搭載の索敵機を用いるのは①②の2本のみとし、空母搭載索敵機を攻撃用に温存しつつ、他の5本は随伴艦の水上偵察機に任せました。

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かてて加えて、発艦時刻が遅れたのは、よりにもよって、中央4本の索敵線を担当する、4機でした。
1時30分発艦予定が、第5索敵線の重巡洋艦「筑摩」1号機が1時35分、第6索敵線の重巡洋艦「筑摩」4号機が1時38分、第3索敵線の重巡洋艦「利根」1号機が1時42分、第4索敵線の重巡洋艦「利根」4号機が2時00分、となったのです。
重巡洋艦「利根」に於ける発艦の遅れは、発艦時刻直前になって、第8戦隊司令官・阿部中将が、対潜水艦哨戒機を先に発艦させるよう、命令したことも影響しましたが、重巡洋艦「筑摩」に於ける発艦の遅れは、搭乗員の練度不足と、緩慢な動作でした。

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悪い事は重なるもので、重巡洋艦「利根」4号機は、ミッドウエイ環礁へ向けて出撃直前、着水失敗事故を起こしており、出発直前という事も相まって、無線機の調整と、コンパスの自差修正が、済んでいなかったのです。
索敵機搭乗員には、配属されたばかりで、練度が低い者もいました。
発艦の遅れと、コンパス誤差未修正の為、発艦後の自己位置推定(作図修正)に、相当苦労したものと考えられます。
索敵軽視の姿勢・練度不足・敵がいないとの思い込み・機器の未調整、等が重なって、『・・・ラシキモノ』という曖昧表現、誤った位置報告が生じ、結果、取り返しのつかない事態を招くのでした。

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ミッドウェイ海戦の一ヶ月前に発生した珊瑚海海戦の時点で、アメリカ側の空母「ヨークタウン」に塔載していたCXAM対空レーダーは、距離68浬(126キロ)で迫りくる日本攻撃隊を捉えて、全乗員からレーダー係が賞賛された、というエピソードが有るそうですが、一方で、ミッドウェイ海戦の際は、日本側の空母「飛龍」から発艦した反撃の第一陣(艦爆隊)を捕捉した距離は、32浬(64キロ)と、その半分以下だったそうです。

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これは、ミッドウェイ海戦時の空母「ヨークタウン」のレーダーの性能、若しくは操作員の技量が低下しいた所為ではなく、空母「飛龍」艦爆隊の指揮官だった小林道雄大尉が、珊瑚海海戦で米軍側が電探を使用していたらしいという戦訓に鑑み、従来の進撃高度3千メートルを、1千~800メートルの低空として電波探知を避け、米艦隊発見と共に突入開始高度まで急上昇する戦法を取った故だそうです。
(画像は、アメリカ空母「エンタープライズ」に搭載された、CXAM対空レーダー。)

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画像は、日本側戦艦「伊勢」に搭載された、対空見張り用レーダー・「二一号電探」で、同型戦艦「日向」には、対水上見張り用レーダー・「二二号電探」が搭載され、5月に伊予灘で実験が行われました。
爾後、両艦は、ミッドウエイ海戦に後方部隊として参加し、電探の効果が確認されたそうですが、情報・索敵軽視の日本海軍の例に漏れず、電探の空母搭載までには、更に月日が掛かります。

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因みに小林編隊は、米艦隊上空で米戦闘機隊の激しい邀撃を受け、投弾前に18機中、実に11機までを失いますが、苦戦の中、小林隊長機は爆弾を抱いたままで果敢にグラマンに空戦を挑み、「日本機パイロットの勇気と正確な攻撃は、印象的なものだった。」と、米軍戦史に記録される戦いぶりを示しました。

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愛知九九式艦上爆撃機一一型D3A1(1940)
爆弾搭載量:307kg 最高速度:時速381km 航続距離:1,473km
軽快な運動性を有していましたが、防弾装備が全くなく、搭乗員から”九九式棺桶”という蔑称を頂戴しました。

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その後、米戦闘機の防御網を突破した小林道雄大尉ら生き残りの艦爆隊は、「ヨークタウン」に果敢に肉薄。
その攻撃も、やはり米側に「日本機搭乗員は、急降下限度ぎりぎりまで肉薄し、目標を確実にとらえた上で、勇敢な・正確な攻撃を加えて逃れ去った。」記録されています。

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小林道雄大尉自身の投弾は、惜しくも至近弾に終わりましたが、続く部下らの攻撃により「ヨークタウン」は炎上、怒りに燃える米艦隊の対空砲火が小林機にも向けられるも、無事回避しておりまして、「(小林道雄大尉機を射撃した駆逐艦)艦長ドナルド・ラムゼー少佐は、怒りのあまり、拳を突き出して罵った。」という一幕もありました。

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グラマンF4F-4ワイルドキャット艦上戦闘機(1942)

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ミッドウエイ海戦に参加したアメリカ空母3隻は、搭載機数を増やす為に、ワイルドキャット戦闘機の全機を、固定翼のF4F-3から、折り畳み翼のF4F-4へ、機種変更していました。

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アメリカ側戦闘機の絶対数が増えた事も相まって、幾度となく危機を潜り抜けた小林道雄大尉でしたが、攻撃終了後も米艦隊上空に留まり、「ヨークタウン」被害状況を通信で報告しようと試み、結果的には、これが命取りとなり、電信2本を発した所で、「エンタープライズ」所属のグラマンF4F戦闘機に捕捉され、撃墜されました。

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小林道雄大尉の武運も、遂に尽きたわけですが、ハイテク優位の米艦隊相手でも、未だ、この時点では、こうした方々の《知恵・勇気・技前》次第では、戦果を挙げられたのでした。

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これは1942年、珊瑚海海戦当時、空母「レキシントン」の戦闘機隊指揮官だった、エドワード・オヘア大尉が、日本の爆撃機5機を撃墜した事に対して、フランクリン・ルーズベルト大統領(手前・座っている人物)から、栄誉勲章を授与された場面です。
後列左から、フランク・ノックス海軍長官、アーネスト・キング海軍大将、オヘア大尉夫人、エドワード・オヘア大尉。

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実際の所、アメリカ海軍艦上戦闘機隊は、自陣の防衛戦闘では、日本の爆撃機・攻撃機を多数撃墜しましたが、ミッドウエイ海戦に於ける自軍の雷撃機・爆撃機護衛では、練度不足から、攻撃隊に合流できなかったり、戦場に遅れて到着しても、意思疎通不足から、上空を飛び回るだけだったりで機能せず、僅か6機の、ジョン・サッチ少佐率いる隊が戦闘に参加しましたが、自らを守るのが精一杯で、役目を全く果たせずに終わりました。

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ミッドウエイ海戦では、第3雷撃隊を護衛するサッチ少佐の第3戦闘機隊6機に対して、総計42機の日本側戦闘機が、二手に分かれて押し寄せました。
この時点で、チーク准尉・シーディ少尉の分隊2機が雷撃隊の直衛位置に就いており、後方に位置するサッチ少佐の本隊に、約20機の日本軍零式艦上戦闘機が襲い掛かってきました。

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サッチ少佐の僚機バセット少尉機が、最初に撃墜されましたが、残ったマッコンバー中尉機とディップ少尉機を合わせた3機で編隊を組み、相互支援空戦(サッチ・ウイーブ)を展開、零式艦上戦闘機3機撃墜・1機撃破という戦果を挙げますが、自軍雷撃機の護衛には、手が回りませんでした。
チーク准尉・シーディ少尉の分隊2機も、相互支援空戦(サッチ・ウイーブ)を徹底した結果、零式艦上戦闘機2機撃墜・1機撃破を記録しますが、その間に、自軍雷撃隊は悲惨な目に遭ったのです。

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零式艦上戦闘機の攻撃が止み、母艦へ戻ろうと周囲を見渡したサッチ少佐は、遠くに日本の航空母艦3隻が炎上するのを望見したそうです。

テーマ : みんなに知ってもらいたい
ジャンル : 日記

tag : ミッドウエイ海戦 ヨークタウン サッチ オヘア

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Author:ecocitro
妻・娘・息子との四人暮らしです。
【シトロエン】
《1975 GS1220 club》
亡父が1975年に新車で購入し、ブログ著者に名義変更して現有。
《1973 DS23IE pallas》
1992~2016 24年間所有。
《1972 SM2.7》
2002~2007 5年間所有。
【楽器演奏活動】
《集団演奏》
JAZZ PIANOの集団演奏活動を、目論んでいます。
《鍵盤/打楽器》
幼少時にクラシック・ピアノを習得。
学生時代の4年間は、ジャズ・ドラムの個人レッスンを受講。
社会人になってから、ジャズ・ピアノ教室で、3人の講師に師事。
【作詞/作曲/編曲】
自作曲をCuebaseで完成させる傍ら、それをネットで公開して、評価を仰ぐ事に注力します。
【ミニカー蒐集】
シトロエンGS/AとシトロエンSMモデル以外を、2017年1月に売却。
【運動】
サッカー・水泳・野球等、色々経験した結果、最も肌に合って楽しいスポーツは、バスケットボールでした。
【鉄道趣味】
山陽・阪急・阪神・神戸電鉄・神戸市電・姫路モノレール・地方ローカル鉄道・軽便鉄道が好きです。
【ミリタリー】
戦史・戦記・飛行機・船舶・兵器・空戦・海戦・軍人について、特に造詣を深めています。
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偶然、「初の選抜総選挙1位戴冠」をテレビ視聴していた事から、指原莉乃さんの在宅・ライトファンとなりました。

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